MENU
随時、更新中!

ひとまいる2026年3月期3Q決算|飲食業界の構造的危機との対峙

ひとまいる2026年3月期3Q決算|飲食業界の構造的危機との対峙

株式会社ひとまいる(7686/旧カクヤスグループ)が2026年2月13日に発表した第3四半期(3Q)決算。逆風を物流インフラという武器で乗り切ろうとする、同社の強靭な脱皮の記録が刻まれている。

営業利益は前年同期比19.0%増の20.5億円を達成。特筆すべきは、不採算店舗の整理に伴う4.3億円の減損損失を計上し、かつ取引先の飲食店での販売数量が減少している事実だ。

このような「影の部分」を公表しながらも、通期の利益予想を上方修正している。ひとまいるは、インフレによる需要減退を「配送網の独占」で打ち消す戦略を描き出した。これからを見据えた、極めて戦略的な内容と言えよう。

目次

ひとまいる2026年3月期3Q決算概要

マクロ環境が悪化する中で、ひとまいるが「増収増益」を確保した事実。ひとまいるのビジネスモデルの強靭さを物語っている。

連結経営成績:減損を飲み込む「稼ぐ力」

  • 売上高: 106,756百万円(前年同期比 +4.6%
  • 営業利益: 2,052百万円(前年同期比 +19.0%
  • 親会社株主に帰属する四半期純利益: 782百万円(前年同期比 +16.9%

セグメント利益の変化:構造改革の成果

  • 店頭販売事業の利益爆発: 売上高は8.7%減少したが、不採算店舗の整理と人員の配達部門へのシフトにより、セグメント利益は4.4億円から8.0億円へと劇的に改善した。
  • 価格転嫁能力: メーカー値上げに対する適切な価格転嫁により、売上総利益率は24.2%(前年比0.9ポイント上昇)へと向上している。

ひとまいる決算から見る|深刻な飲食店市場

インフレが需要を冷え込ませる「コストプッシュ型」の弊害は、ひとまいるの売上データにも鮮明に現れている。

通期の売上高予想を下方修正した事実は、飲食店側がもはや「買えない」フェーズに突入したことを示している。卸側が利益を確保する一方で、現場の疲弊は極限に達しており、業界全体が構造的な曲がり角にあるのは明らかだ。

飲食店の「買い控え」と発注ベースの停滞

ひとまいるは今回、通期の売上高予想を20億円下方修正した。

  • 修正理由の核心: 「取引先の飲食店に対する販売数量が減少している影響」を明言している。
  • 客側の防衛本能: 食材高騰と賃上げ負担の板挟みになった飲食店は、メニュー値上げによる客数減を恐れ、仕入れ数量を極限まで絞る「守勢」に入っている。これが、卸側である同社の売上高を下振れさせる要因となった。

2026年も続く値上げの波:人件費由来の第2波

帝国データバンクの調査によれば、2026年の値上げ要因の66.2%が「人件費」由来である。

  • モノからサービスへ: 原材料高だけでなく、物流費や包装資材、そして何より人件費の転嫁が本格化しており、コスト増の要因が多層化している。
  • 円安リスクの再燃: 1ドル=150円台という円安水準の長期化は、輸入コストを通じて2026年春以降のさらなる値上げラッシュを招くリスクを孕んでいる。

旧カクヤスからの決別|生存のためのプラットフォーム化

飲食店が仕入れを絞る中、生き残る道は「酒だけを運ぶ業者」からの脱却であった。同社は今、食材卸と連携し、酒類以外の商材を拡充している。

さらに、AIを活用した物流DXも推進している。目指すのは、単なる配送業者ではない。人手不足に悩む飲食店のバックヤードを支える、不可欠なインフラとしての地位確立である。

物流の武器化による「一括調達プラットフォーム」

  • ミクリードとの資本業務提携: 食材卸のミクリードと連携し、酒類以外の食材・乳製品の取り扱いを急拡大させている。
  • ルート配達の変質: 1月の売上高が前年比109.4%と急伸した要因は、まさに酒類以外の商材の取引増加による客単価の上昇である。飲食店にとって、配送業者をまとめることは、人手不足とコスト高に対する最大の解決策になりつつある。

3億円の減損:将来への「膿出し」

同社は今回、不採算店舗等に関わる固定資産について減損損失432百万円を計上した。これは、収益性の低い旧来型の小売資産を整理し、高収益な物流プラットフォームへとリソースを集中させるための、不可避かつ前向きな決断と言えよう。

ひとまいる決算投資判断|高配当利回りのリスク

現在のひとまいるは、高配当を享受しながら、構造改革の完了を待つフェーズにある。同社の累進配当の安全性と、EBITDAの強さを信じ切れるかが判断のポイントだ。

  • 配当利回り4.7%: 年間20円(分割考慮後)の配当維持に対し、修正後のEPS 19.06円はタイトに見えるが、現金創出力を示すEBITDAは2,758百万円(前年比17.2%増)と極めて堅調である。
  • システム投資の遅延による「利益増」の罠: 営業利益の上方修正は、システム稼働の遅れによる「減価償却費の減少」という会計上の要因を含んでいる点には注意が必要だ。実質的な効率化が数字に現れるのは来期以降となる。

結論:ひとまいるに抱く未来への期待

2026年2月13日の決算報告は、ひとまいるが「飲食店が買い控える」という過酷な市場において、単なる物売りから配送インフラへと進化を遂げたことを証明した。食材価格の高止まりは今後も続き、飲食店にとっては厳しい冬が続くであろう。

しかし、だからこそ「一括調達・効率配送」を担う同社の価値は高まり続ける。不採算資産の減損を飲み込みながら利益目標を引き上げた判断は、まさに「無事これ名馬」の精神であると言えよう。

現在の高利回りを享受しつつ、システム稼働後の真の収穫期を待つ価値は、極めて大きい。

番外:食の高止まりと物流プラットフォームへの生存戦略

飲食業界を取り巻く環境は、統計上の「インフレ鈍化」という言葉では片付けられないほど深刻な局面に達している。現場において価格は「下がった」のではなく、過去最高域で「高止まり」しているのが真実である。この断崖絶壁において、株式会社ひとまいる(旧カクヤスグループ)が描く冷徹な生存戦略を分析する。


1. 「需要減」という現実に潜むコストプッシュの毒

統計上のコアCPIは2.4%まで縮小したが、これは政府のエネルギー補助金による「偽りの沈静化」に過ぎない。

  • 終わらない食料インフレ: 生鮮食品を除く食料は依然として前年比6.7%上昇しており、米類に至っては34.4%〜64.6%という歴史的な暴騰水準で高止まりしている。
  • 飲食店の「守勢」と販売数量減: この「マズいレベル」のコスト増に対し、飲食店は仕入れ数量を極限まで絞る防衛策を講じている。ひとまいるの売上高下方修正の主因は、まさにこの現場の「買い控え」にある。
  • 2026年の人件費リスク: 帝国データバンクによれば、今後の値上げ要因の6割強は「人件費」だ。原材料高に、仕入れ業者からと自社の人件費増が重なる「挟み撃ち」は、ひとまいるにとっても配送経費を押し上げる深刻な懸念材料である。

2. AIと物流網で掴み取る「逆転のシナリオ」

ひとまいるの勝機は「飲食店が自力で物流を維持できなくなる危機」に集約される。

  • 物流プラットフォームへの完全移行: 飲食店が個別に食材を仕入れるコストが限界に達する中、酒・食材・消耗品を「一括調達・一括配送」する同社の配送網は、代替不可能な社会的インフラへと昇華している。
  • 価格転嫁と独占権: 販売数量が減る中で利益を上方修正できたのは、物流という「独占的な付加価値」を背景に、適切な価格改定を断行できる価格決定権を保持しているからだ。
  • AI・DXによる極限の効率化: AIを活用した自動発注による在庫削減や、データ連携基盤の構築により、人件費高騰を「回転率」と「配送密度の向上」で相殺するモデルを確立しつつある。

3.結論としての生き残り戦略

ひとまいるは「酒屋」から、AIを駆使して食のラストワンマイルを支配するロジスティクス・テック企業へと変貌を遂げようとしている。飲食店の苦境は、同社のプラットフォームへの依存度を皮肉にも高めており、この「インフラとしての独占力」こそが、2027年3月期以降の飛躍を担保する最大の武器となるであろう。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次