インフォマートが発表した2025年12月期の決算。次期営業利益50億円への揺るぎない根拠を打ち出したポジティブな内容であった。しかし、市場に渦巻く「SaaSの死」への過剰な懸念や需給の歪みにより、株価は情報の空白地帯に沈んでいる。一見ネガティブに見えているが、第一生命が認めたプレミアム価値と、高市政権の「消費税0%」の追い風期待は、大逆襲への号砲だ。次世代に向けたAI武装を進める、新時代の旗手の全貌を解剖していく。
2025年12月期本決算|目標から格上げされた次期予想
2025年12月期の実績は、徹底したコスト管理とクラウド移行の完遂によって、利益面で当初の会社予想を28.2%も上回る「超絶着地」となった。さらに、これまで中期経営計画の「最終目標」であった「営業利益50億円」を、2026年度の公式な通期業績予想とした。
これは単なる努力目標ではなく、株主に対して達成を約束する「公約」へと昇華したことを意味している。その実現角度の高さは市場の信頼を勝ち得るに十分なものだ。
2025年12月期 実績(連結)
- 売上高:188億17百万円(前期比 +20.4%)
- 営業利益:28億63百万円(前期比 +138.6%)
- 経常利益:28億36百万円(前期比 +138.9%)
- 親会社株主に帰属する当期純利益:19億22百万円(前期比 +193.3%)
2026年12月期 通期業績予想(連結)
- 売上高:213億48百万円(前期比 +13.5%)
- 営業利益:50億00百万円(前期比 +74.6%)
- 経常利益:48億35百万円(前期比 +70.5%)
- 親会社株主に帰属する当期純利益:30億97百万円(前期比 +61.1%)
参照:インフォマート|2025年12月期 決算短信〔日本基準〕(連結)
参照:インフォマート|2025年12月期 決算説明資料
インフォマート本決算|5つのポジティブな点
今回の発表は、単なる好業績の報告に留まるものではない。第一生命との提携やAI武装、そして大幅増配など、企業価値を高める「構造的なポジティブ材料」が網羅されている。とりわけ、プレミアム価格での資金調達と株主還元を両立させた資本政策。これは特に、中長期投資家にとって極めて魅力的な内容であるといえるだろう。
営業利益50億円達成への「極めて高い実現確度」
これまでの中期経営計画において「最終目標」として掲げていた営業利益50億円。これを今回2026年度の公式な業績予想へと格上げして発表した意義は極めて大きい。今回の強気な姿勢を裏付けているのは、2024年9月に完了したサーバーのクラウド移行による年間約10億円規模のコスト削減効果。加えて、既に実施済みの各サービスにおける料金改定の収益押し上げ効果が最大化するフェーズに入っている点にある。
FOOD事業の営業利益率が32%へ急改善する計画は「合理的な費用減少」に基づくと評価できる。2025年度4Qに集中投下した大規模なブランディング施策も一巡するはずだ。2026年度は売上の増分がそのまま営業利益に積み上がる「利益爆発」シナリオの精度が極めて高いと分析される。
第一生命HDが「435円」で判を突いた価値のアンカー
国内最大級の機関投資家である第一生命ホールディングスとの資本業務提携は、インフォマートの価値を知らしめる決定打となった。特筆すべきは、割当価格 435円 の決定根拠における妥当性と、そこから透けて見える強烈な期待感である。 この払込金額は、取締役会決議の直前営業日の終値401円に対し 8.48%、直近3ヶ月平均403円に対し 7.94%。さらには直近6ヶ月平均375円に対し 16.00% ものプレミアムを乗せた水準だ。
日本証券業協会の指針に厳格に準拠しながらも、あえて高いプレミアムを許容して巨額出資を決めた事実。第一生命が短期的な市場のノイズを完全に無視し、125万社を超える商流ネットワークの将来性を高く評価した証左である。
この435円という数字は、今後の株価形成において強力な上値誘導の磁石(アンカー)として機能するはずだ。安値で蓋をしていた空売り勢の退路を完全に断つことになるだろう。
174億円の調達資金が描く「成長曲線」
今回の第三者割当増資によって調達される約174億円の使途は、同社の将来像をより具体的に描き出している。
- M&A・企業投資(10,909百万円):外食業界の深掘りに60億円、建設やFintech関連企業への投資に49億円を充当し、Vertical展開のスピードを「買う」ことで加速させる。
- システム・AI開発(4,500百万円):新業界特化プロダクトの開発や、膨大な取引明細データを活用したAIプロダクトの開発に投資する。
- 借入金返済(2,000百万円):三井住友銀行、三菱UFJ銀行等の借入を返済し、財務体質を盤石なものとする。 単なる運転資金の確保ではなく、ネットワークを質・量ともに拡大するための「攻めの戦費」である点は、株主にとって極めて心強いといえる。
invox関連会社化による「AI武装」の完了
AI-OCR分野のリーダーである株式会社invoxを関連会社化した事実。これにより、市場に渦巻いていた「AIによるSaaSの代替」という懸念に対し、具体的な「攻め」の回答を示した。インフォマートが持つ構造化された膨大な取引明細データ(DtoD)と、invoxが誇る非構造化データの解析AIの融合。アナログからデジタルまで全ての請求業務を自動化する次世代サービスを開発するのである。
つまり、AIを自社のネットワークに取り込み、プラットフォームの付加価値をさらに高める体制が整ったといえる。AIはインフォマートにとって脅威ではない。125万社のデータをさらに価値あるものに変える強力な「燃料」へと再定義されたのである。
キャッシュ創出力を示す「3.1倍の大幅増配」
2025年度の期末配当を直近予想から大幅に増額し、年間配当は前期比 3.1倍の5円44銭 となった。さらに2026年度の予想配当として 6円58銭 を掲げ、成長と還元の両立を力強く示している。同社が「個別業績に基づく配当性向50%」の基本方針を遵守している事実。これは、巨額投資を行いながら、配当を支払うに十分な現金を恒常的に生み出せる盤石な収益構造を証明するものだ。
「SaaSの死」がインフォマートに当てはまらない理由
現在、一部で囁かれている「SaaSの死」という議論は、インフォマートの本質を見誤った表面的な見方に過ぎない。AIが容易に代替できるのはPDF化や文字読み取りといった「個別の処理ツール」である。それに対し、インフォマートが提供しているのは、125万社以上のが実務で繋がり、データを検証し合っている巨大な「商流ネットワーク」だ。
インフォマートのプラットフォーム上では、年間数兆円規模に及ぶ膨大な商取引が流れている。AIがこの巨大かつ信頼性の高い「決済と契約の事実」に基づいたネットワークを一朝一夕に作り出すことは不可能である。むしろ、AIが普及すればするほど、そのデータの通り道であるインフォマートの価値は向上するだろう。
AIが最も必要とするのは「構造化された正しい明細データ」である。それを独占的に保有しているからこそ、同社はAIに駆逐される側ではない立ち位置を確保できる。AIを自社のインフラ上で飼い慣らすプラットフォームホルダーとして、新時代の覇者となるポジションを確立しているのである。
インフォマート本決算|あえて指摘する「懸念点」
今回の資本政策や投資計画は非常に野心的かつ戦略的である。それゆえに、投資家としては希薄化の実態やM&Aに伴う不確実性についても冷静に見極める必要があるだろう。
しかし、開示された詳細なデータからは、これらの潜在的リスクを補って余りある将来的なリターン。加えて、既存株主の利益を最大化するための緻密な防衛策が読み取れるのである。
実質的な株式希薄化はわずか「約3.1%」程度
第一生命への割当により議決権ベースでは17.73%の希薄化が発生するが、この数字の「質」を正しく理解することが極めて重要だ。今回割り当てられる株の大部分は、これまで消却(償却)せずに温存してきた「金庫株」の処分によって賄われる。
純粋な増資(新株発行)による発行済株式数の増加はわずか 3.11% にすぎない。1株当たり利益(EPS)への直接的な悪影響は限定的であるといえる。
これまで市場で「ゼロ」と評価されていた金庫株を、435円という高値で国内最大級の機関投資家に売却。結果、174億円もの軍資金を確保した手法は、企業価値を底上げする「理想的な資本政策」であると高く評価できるだろう。
調達資金109億円によるM&Aの成否とシナジー
第一生命から調達した資金のうち、実に109億円をM&Aや企業出資に充当する成長への布石を打ち出した。外食業界の深掘りや建設、Fintechといった既存の柱を強化する買収が期待される。しかし一方で、買収価格の妥当性やその後のPMI(統合プロセス)には常に不確実性が伴う。
しかし、同社は直近でもinvoxやタノムといった「自社の価値を向上させる技術」を持つ企業をピンポイントで取り込んだ実績を持つ。その投資判断の実績は極めて実務的で成功確率が高いといえる。今回のM&Aによって、オーガニックな成長だけでは数年かかる「他業種DtoDの全国制覇」が大幅に前倒しされる期待感。こちらの方が、リスクを遥かに上回っているだろう。
人的資本への投資強化とコスト管理のバランス
2026年度は人的資本の拡充を目的としたベースアップ。さらに、AI・DXといった専門人材の採用・育成に年間約5億円規模の追加投資を継続する計画だ。人件費の増大は短期的には販促費の減少分を相殺する。
一見するとコスト増の要因に見えるが、これは「未来の収益源」への不可欠な先行投資といえる。売上高営業利益率23.4%、営業利益50億円という強気な今期予想。これは人的投資を飲み込んだ上での「現実的なマージン改善」によって増分コストをカバーできる目論見となっているのである。
インフォマート決算|筆者の見解
インフォマートの2025年12月期決算はインラインだが、第一生命との提携も加味するとポジティブ。市場が「情報の歪み」に陥り、AIの影に怯えていた中で放たれた、最強のカウンターショットであった。
国内最大級の機関投資家である第一生命が「435円で174億円出す」と実弾を投じた。
さらには、会社側が「利益50億円は来期の公約だ」と宣言した。2/13決算発表日の証金残速報「0.16倍」 という異常な売り長データは、逃げ遅れた空売り勢の断末魔を予感させるものだ。
希薄化への懸念をプレミアム価格での自己株処分で解決し、174億円の「戦費」を手に入れたインフォマート。正当な評価を取り戻す準備は整い、2026年は次へのステップに移行する年となる公算が大きい。
まとめ|インフォマート決算2025年12月期
- 実績と公約:前期利益は大幅上振れ。今期は営業利益50億円を「公式予想」として提示。
- 最強の提携:第一生命と資本業務提携。435円のプレミアム価格で174億円調達。新株希薄化はわずか3%。
- AIへの回答:invox関連会社化でAIを武装。125万社のデータを「燃料」に変えるプラットフォームホルダーへ進化。
- 他業種展開:建設、医療、行政DXに加え、第一生命のチャネルを活用した「確度の高い成長」が始動する。
- 圧倒的還元:前期比3.1倍の大幅増配と、次期の連続増配を計画。キャッシュ創出力への絶対的自信を証明している。
Special Thanks|中島健 相談役
中島健氏が取締役を退き「相談役」となる人事は、一つの大きな時代の区切りといえるだろう。同氏が2022年1月に代表取締役社長に就任した当時、インフォマートを取り巻く環境は極めて厳しい状況にあった。株価の下落が続く中、前任から引き継いだ「事業の多角化」という重責がのしかかる困難な局面であった。また、当時掲げた高水準な中期経営目標の達成についても、特に機関投資家から厳しい目を向けられていた。
2010年、創業者の故・村上勝照氏の人間性とビジネスモデルに共感して入社。2015年の請求書サービスの立ち上げをはじめ、売上の伸長を最優先してきた中島氏。将来の飛躍を見据えたサーバークラウド移行や、新規事業への先行投資の手も緩めなかった。そのため、トップラインは成長している一方で利益が出しにくい構造が続き、第二の柱であるES事業(電子請求書等)も赤字が継続。投資家にとっても忍耐を強いられる段階が続いていたのである。
それでも多くの投資家が同氏を信じ、投資を継続できたのは、早大ラグビー部で日本選手権優勝を経験した「アツい」リーダーシップ。加えて、決算説明動画で見せる緻密かつ流暢な解説に、確かな未来を感じられたからだ。中島氏が心血を注いで磨き上げたネットワークは、就任時の60万社から125万社へと倍増した。名実ともに「社会インフラ」としての完成形に到達しつつある。
今回の第一生命との提携により、営業利益50億円を「必達の公約」へと格上げしたことは、経営体制強化の集大成であるといえる。彼は、自らの退任をもって、インフォマートの株価にかけられていた「不信感という呪縛」を解いたのかもしれない。次世代へ最強のバトンを渡し終えたリーダーの功績に深く感謝するとともに、相談役として歩む新たなステージでの活躍に大いに期待したい。

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