「不動産投資は節税になる」。営業や広告で一度は目にした人も多いはずです。今回は、不動産投資の節税が本当に効果を生むのか、公的な資料をもとに中立の立場で検証します。
結論を先に言えば、不動産投資の節税は「効果が出る人」と「ほとんど出ない人」に分かれ、仕組みを知らないまま始めると、かえって損をする場合もあります。減価償却と損益通算の考え方、効果が出やすい年収の目安、見落としやすい落とし穴までを順に整理します。
ひとつの営業提案を鵜呑みにする前の、第三者からのセカンドオピニオンとして役立ててください。
📣 このコラムでわかること
- 不動産投資の節税が「効く人」と「効かない人」を分ける3つの条件
- 減価償却と損益通算の仕組み、効果が出やすい課税所得の目安(税率33%の壁)
- 「節税になる」を鵜呑みにして損をする落とし穴と、営業提案の見極め方
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不動産投資の節税は「なる」と「ならない」どちらも正しい

不動産投資の節税について最初に押さえるべきは、「なる」と「ならない」のどちらの主張も、条件次第でどちらも正しい点です。節税効果が出るかは、課税所得の水準、購入する物件、運用の状況で変わります。仕組みを理解しないまま「節税になるから」という理由だけで購入すると、期待した効果が得られない側に回ってしまいます。
本記事では次の4点を順に確認します。
- 節税につながる仕組み
- 効果が出る人と出ない人を分ける条件
- 鵜呑みにすると危ない落とし穴
- 自分のケースで成立するかを確かめる方法
ただし、数値の一部は前提を置いた計算例であり、実際の税額や収支は個人の状況によって変わる点を、あらかじめ申し添えます。なお、税率や控除額は国税庁が公表する速算表に基づいて記載しますが、最終的な判断は必ず一次資料と専門家の確認を前提としてください。
不動産投資の節税を生む仕組み(減価償却と損益通算)

不動産投資の節税を理解する鍵は、減価償却と損益通算の2つにあります。2つがかみ合ったときにだけ、税負担が軽くなる余地が生まれます。逆に言えば、どちらかが機能しない状況では、効果は限定的になります。
減価償却:現金支出をともなわない経費
減価償却とは、建物の取得費を、法定耐用年数に応じて複数年に分けて経費計上する仕組みです。特徴は、購入した年以降、実際に現金が出ていかないにもかかわらず、帳簿上は経費として差し引けます。「現金は減らないのに経費になる」性質こそ、不動産投資が節税につながると言われる出発点です。
ただし、経費にできるのは建物部分であり、土地は減価償却の対象になりません。また、耐用年数は構造や築年数によって異なり、計上できる年数や1年あたりの金額も変わります。木造か鉄筋コンクリート造か、新築か中古かで効果の出方が大きく変わる点は、後の物件選定にも直結します。
損益通算:不動産の赤字を給与所得と相殺する
損益通算とは、不動産所得で生じた赤字を、給与所得など他の所得と相殺できる仕組みです。会社員の場合、給与から源泉徴収された税金が、確定申告によって一部還付される形で効果が現れます。給与所得が大きい人ほど、相殺による影響が相対的に大きくなる傾向があります。「高年収の会社員に不動産投資がすすめられやすい」と言われる背景です。
一方で、損益通算には制限もあります。たとえば、土地取得のための借入金利子は、損益通算の対象から除かれる扱いがあります。「赤字なら何でも給与と相殺できる」と単純に理解するのは危険です。
「節税」の正体は課税の繰り延べでもある
見落とされがちですが、不動産投資の節税には、税負担を将来へ先送りしているだけの側面があります。減価償却で経費計上を進めると、減価償却の進行分だけ物件の帳簿上の価値(簿価)は下がります。将来売却する際、簿価が下がっているほど売却益は大きく計算され、譲渡所得への課税が増える可能性があります。
つまり、保有中に軽くなった税の一部が、売却時に戻ってくる構図です。所有期間によって譲渡所得の税率区分(短期・長期)が変わる点もあわせて、出口まで含めた損得で見る必要があります。目先の還付額だけを見て「得をした」と判断するのは早計です。
💡 ポイント 減価償却は「現金を使わず経費にできる」仕組みだが
- 土地は対象外
- 構造・築年数で効果が変わる
- 売却時に課税が戻る
不動産投資の節税が効く人・効かない人の条件

不動産投資の節税が実際に効くかどうかは、年収と課税所得の水準で大きく変わります。検索で「節税にならない」と調べる人がもっとも知りたい部分です。まず、効果が出にくい典型的なパターンを整理します。
節税に「ならない人」の典型3パターン
効果が出にくいのは、次のようなケースです。
- 課税所得が低い人:損益通算で相殺しても、もともと適用される税率が低ければ、戻る税額も小さくなります。
- 物件選定を誤った人:減価償却が十分に取れない物件では、そもそも計上できる経費が限られます。
- 運用が黒字の人:不動産所得が黒字であれば、給与所得と相殺する赤字が生まれず、損益通算の効果は働きません。
もっとも本質的なのが、1つめの課税所得の水準です。日本の所得税は超過累進課税で、課税所得が高いほど税率が上がります。したがって、同じ額の赤字を相殺しても、税率が高い人ほど戻る税額が大きくなる傾向があります。
効果が相対的に大きいとされる年収の目安
重要なのは、「年収(額面)」と「課税所得」を混同しない点です。課税所得とは、額面の年収から給与所得控除や各種所得控除を差し引いた後の金額を指します。税率は課税所得に対して決まります。
国税庁の速算表によると、所得税率は課税所得に応じて次のように区分されています。
| 課税所得金額 | 所得税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 195万円以下 | 5% | 0円 |
| 195万円超〜330万円以下 | 10% | 97,500円 |
| 330万円超〜695万円以下 | 20% | 427,500円 |
| 695万円超〜900万円以下 | 23% | 636,000円 |
| 900万円超〜1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
| 1,800万円超〜4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
| 4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
加えて、住民税が一律で約10%、復興特別所得税が所得税額の2.1%(2037年分まで)かかります。
表からわかるのは、課税所得が900万円を超えると所得税率が33%に上がり、住民税とあわせた負担が重くなる点。「課税所得900万円超=税率33%」の水準に達している層では、損益通算による相殺の効果が相対的に大きく出やすいと考えられます。逆に、課税所得が低い層では、同じ仕組みを使っても効果は限定的にとどまる傾向があります。
年収900万円前後は損得の分かれ目になりやすい
給与所得控除は年収が一定額を超えると頭打ちになるため、年収900万円前後の会社員は、額面の伸びに対して手取りが増えにくいと感じやすい層です。税負担への関心が高く、節税をうたう提案も届きやすい位置にあります。
ただし、注意が必要です。税負担が重いからといって「節税ありき」で物件を選ぶと、後述する落とし穴にはまりやすくなります。節税はあくまで結果であり、収益性を欠いた物件への投資は、税で得た分以上を失いかねません。自分の課税所得がどの区分にあり、どの程度の効果が見込めるのかは、一般論ではなく個別の試算で確認する価値があります。
自分の年収では、いくら節税になる?プロに個別で試算してもらう
- 課税所得で不動産投資の節税がどの程度成立するかは、個別性が高く判断しにくい。
- 区分マンション投資の個別面談で、自分の属性に沿った試算を受ける方法がある。

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不動産投資の節税を鵜呑みにして失敗する落とし穴


不動産投資の節税を目的化すると、いくつかの落とし穴にはまります。「節税になる」の一言が、判断を誤らせる入り口になる場合は少なくありません。代表的な3つを取り上げます。
節税額より大きい「実際の持ち出し」
もっとも多い誤りが、節税で戻る税額と、毎月の収支を切り離して考えてしまう点です。毎月の家賃収入よりローン返済や管理費が上回り、収支が赤字になっていれば、赤字は実際の持ち出しです。
節税で年間数万円が還付されても、毎月の持ち出しが上回れば、トータルでは損をしています。「節税になるから多少の赤字は問題ない」という説明には、視点が抜けている場合があります。
利上昇・空室・流動性のリスク
節税のメリットを語るなら、同時にリスクを見なければ判断を誤ります。とくに2026年は、金利環境が変わりつつある局面です。大手証券会社のレポートによると、日本の長期金利は上昇傾向にあり、10年国債の利回りは3%に迫る水準まで意識される状況とされています。
借入に頼った不動産投資では、金利の上昇が返済負担を押し上げ、節税で得た効果を相殺してしまう可能性があります。金利以外のリスクも見逃せません。空室が出れば家賃収入はゼロになりますが、ローン返済は続きます。
さらに区分マンションは、売りたいときにすぐ売れるとは限らず、流動性にも制約があります。節税というメリットの裏側には、リスクが常に存在します。
「節税=正義」ではない、判断軸はトータル収支
結局のところ、不動産投資を節税だけで判断するのは危険です。税は運用の結果として軽くなる場合はあっても、目的にすると、収益性の低い物件をつかむ原因になります。見るべきは、税引き後のトータルリターンです。節税額、毎月の収支、将来の売却まで含めて、全体で利益が残るのかを判断する必要があります。
不動産投資の節税が自分に成立するか確認する方法


不動産投資の節税が自分のケースで成立するかは、次の手順で確認できます。営業に判断を委ねる前に、自分で最低限の材料をそろえておくと、提案の妥当性を見極めやすくなります。
まず自分の課税所得と税率区分を把握する
出発点は、自分の課税所得を知る作業です。会社員であれば、源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」から所得控除を差し引いた金額が、おおよその課税所得にあたります。
額面の年収ではなく、課税所得が先ほどの速算表のどの区分に入るかで、見込める効果の大きさが変わります。把握せずに「節税になる」と言われても、効果の大小は判断できません。
シミュレーションは前提条件を必ず確認する
営業から提示されるシミュレーションは、前提条件をそろえて見る必要があります。具体的には、元本・年率・年数・複利かどうか、そして「利回りは保証されない」「税引き前である」「手数料は別途かかる」といった注記があるかを確認します。
欠けた試算は、都合のよい数字だけを並べている可能性があります。前提が明示されない資料は、鵜呑みにしない姿勢が大切です。
ひとつの営業提案で決めない姿勢
最後に、もっとも重要なのが、ひとつの提案だけで判断しない点です。不動産投資会社の提案は、各社が扱う物件を前提に組み立てられています。異なる立場からの意見を重ねると、初めて提案の妥当性が見えてきます。セカンドオピニオンの考え方の核心です。
自分の課税所得を把握し、前提を確認する準備が整ったら、専門家や複数の窓口で具体的に検証する段階に進みます。
準備ができたら、自分の物件で「トータル収支」を試算してもらう
- 自分の年収・物件条件で節税とトータル収支がどうなるか?
- 区分マンション投資の個別面談で具体的に試算すると、判断材料がそろいます。
- 面談の場で契約する必要はなく、提案内容を持ち帰って検討もできます。



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よくある質問(Q&A)
- 不動産投資の節税は年収いくらから効果がありますか?
-
額面の年収ではなく、課税所得がどの税率区分に入るかで判断します。一般的には、課税所得が900万円を超えて所得税率が33%になる水準では、損益通算による効果が相対的に大きく出やすいと考えられます。ただし、物件や運用状況によって結果は変わるため、最終的には個別の試算と一次資料での確認が必要です。
- ワンルームマンションでも節税になりますか?
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仕組みのうえでは、区分のワンルームマンションでも減価償却と損益通算は使えます。ただし、物件価格に占める建物割合や耐用年数によって、計上できる減価償却費は変わります。毎月の収支が赤字で持ち出しが続く場合には、節税額を上回る損失が出て「節税にならない」結果になる場合もあります。
- 減価償却が取れる期間はどのくらいですか?
-
建物の構造と築年数によって決まる法定耐用年数に応じます。たとえば鉄筋コンクリート造と木造では耐用年数が異なり、中古物件では残存年数の考え方も加わります。正確な年数と計算方法は、国税庁の資料で確認してください。
- 「節税になる」との営業を信じて大丈夫ですか?
-
節税のメリット自体は事実ですが、自分に当てはまるかは別問題です。毎月の収支、金利や空室のリスク、将来の売却まで含めた全体で判断する必要があります。ひとつの提案を鵜呑みにせず、前提条件を確認し、複数の視点で検証する姿勢が安全です。
まとめ|不動産投資の節税効果


不動産投資の節税は本当か。答えは「人による」です。効果が出るのは、課税所得が高く、減価償却が取れる物件を選び、損益通算がかみ合った場合に限られます。課税所得が低い、物件選定を誤る、運用が黒字といった条件では、期待したほどの効果は出ません。
大切なのは、節税を目的化せず、税引き後のトータル収支で判断する姿勢です。目先の還付額だけでなく、毎月の持ち出し、金利上昇や空室のリスク、将来の売却時の課税まで含めて、全体で利益が残るかを見極める必要があります。そのためには、自分の課税所得を把握し、シミュレーションの前提を確認し、ひとつの営業提案に頼らず複数の視点で検証する作業が欠かせません。本記事が、判断のためのセカンドオピニオンとなれば幸いです。










