インフォマート株価は2026年10月30日に766円で引けた。年初来高値は10月28日の808円である。
オアシス・マネジメントの保有は10月15日提出の変更報告書で24.70%に到達。同時に「5%超の追加取得」を予定する記述が保有目的から消えた。
予想PERは66倍で、上昇幅の全量は倍率の拡大で説明される。会社は同日引け後の3Q決算でも、業績予想・配当・自社株買いのいずれも動かさなかった。本稿はインフォマート株価を需給の実数から捉え直し、買い止まり後に何が狙われるかを整理する。
※本記事は投資推奨を目的としたものではない。筆者はインフォマート株式を保有する。
先に結論を書く。
- 年初来安値346円から766円への上昇420円は、全量がPERの拡大で、業績の寄与はゼロ
- オアシスの買付は10月7日(44万株)が最後に確認できる日で、以降の出来高は日平均177万株へ半減
- 平均取得単価は577円、10月30日終値に対する含み益は約125億円
- シンフォニーとオアシスの合計は50.61%(議決権ベース50.78%)で過半を超えた
- 3Q決算はゼロ回答で、次の焦点は年内の次期中計と臨時総会請求権
インフォマート株価の上昇理由|PERでは説明不能
インフォマート株価の上昇は、業績ではなく倍率の拡大で起きている。
会社の2026年12月期予想は2月13日の公表値から一度も修正されず、10月30日の3Q決算でも据え置かれた。
| 時点 | 株価 | 予想EPS | 予想PER | 位置づけ |
|---|---|---|---|---|
| 2026/6/12 | 346円 | 11.6円 | 29.8倍 | 年初来安値 |
| 2026/7/2 | 400円 | 11.6円 | 34.5倍 | オアシス判明日 |
| 2026/9/18 | 713円 | 11.6円 | 61.5倍 | 前回記事時点 |
| 2026/10/28 | 797円 | 11.6円 | 68.7倍 | 年初来高値808円(場中) |
| 2026/10/30 | 766円 | 11.6円 | 66.0倍 | 3Q決算発表日 |
出典:東京証券取引所公表値、同社決算短信より筆者作成。(EPSは通期予想純利益3,097百万円を自己株控除後株式数で割った値)
EPSが動かない以上、6月から10月の上昇420円はすべて倍率の変化である。
PERを根拠に高安を論じても、現在の値動きは説明できない。価格を決めているのは業績を評価する買い手ではなく、議決権を集めるオアシスだ。問題は、その買い手が10月に入って手を止めた点にある。
オアシスは10月7日で買い止まり|24.70%
インフォマート株価を押し上げてきたオアシスの買付は、10月7日を最後に開示上は確認できない。
保有目的の記述変更、出来高の急減、報告書の途絶の3点が同じ方向を指している。
オアシスのPOINT
- 5%超取得の予定が保有目的から消えた
- 出来高は半減|オアシス以外の売買は細い
- 平均取得単価577円|含み益は約125億円
5%超取得の予定が保有目的から消えた
10月8日提出の16回目までの報告書には、保有割合をさらに5%超増やす行為を予定するとの段落があった。
期間は報告義務発生日から3か月以内とされていた。10月15日提出の17回目では、この段落が削除され、提出事由に「保有目的の変更」が加わった。
一方、重要提案行為の記述は変わっていない。役員の選任、役員構成の変更、事業の一部廃止は「提案を行っている」とされ、代表取締役の解職や上場廃止は12か月以内に提案予定と明記された。12か月の起点は最新の報告義務発生日10月7日で、2027年10月までが射程になる。
追加取得の予定を外し、提案の記述を残した変更は、集める段階から動く段階への移行と整合的である。ただし文言の削除は、追加取得をしないことの確定ではない。
出来高は半減|オアシス以外の売買は細い
17回目の報告書の60日明細では、オアシスは10月2日〜6日に日82万株を買い、10月7日は44万株に半減させた。
10月1日〜7日の出来高は日平均約370万株で、オアシスは2割強を占めていた。

10月8日〜30日の16営業日は、日平均約177万株にとどまる。
オアシスの買いが抜けた分以上に出来高が減っており、オアシス以外の売買も細った。10月15日以降、新たな変更報告書は出ていない。1%以上の増加がなければ報告義務は生じないため、少量の買付が続いている可能性は残る。
平均取得単価577円|含み益は約125億円
| 回 | 報告義務発生日 | 保有割合 | 保有株数 | 取得資金 | 累計平均 | 区間の単価 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 13 | 9/11 | 20.13% | 53,838,600株 | 293.0億円 | 544.1円 | 705.7円 |
| 14 | 9/17 | 21.36% | 57,129,800株 | 316.4億円 | 553.9円 | 713.6円 |
| 15 | 9/28 | 22.60% | 60,449,100株 | 340.2億円 | 562.8円 | 715.4円 |
| 16 | 10/1 | 23.61% | 63,166,600株 | 359.7億円 | 569.4円 | 718.0円 |
| 17 | 10/7 | 24.70% | 66,066,600株 | 381.2億円 | 577.0円 | 740.8円 |
出典:EDINET変更報告書(各回)より筆者算出。区間の単価=取得資金の差分÷保有株数の差分
最後の区間は740.8円で取得しており、高値づかみは最後まで続いた。
それでも10月30日終値766円に対する含み益は約125億円ある。保有6,607万株は直近の日平均出来高の約37営業日分で、市場内で売れば自ら価格を崩す。降りる経路は、相対取引・自社株買いへの応募・TOBへの応募に限られる構造は変わらない。

株主構成|2大株主で議決権の過半を超えた
インフォマート株価を支える構造的な要因は、売買可能な株式の細りである。オアシスの買い増しで、上位2者の合計は発行済株式の過半を超えた。
上位3者65.67%|浮動株は34%まで縮小
| 株主 | 保有割合 | 報告義務発生日 | 備考 |
|---|---|---|---|
| シンフォニー・フィナンシャル・パートナーズ | 25.91% | 8/20 | 69,315,600株 |
| オアシス・マネジメント | 24.70% | 10/7 | 66,066,600株 |
| 第一ライフグループ | 15.06% | 4/1 | 契約上の譲渡制限あり |
| 野村グループ | 5.59% | 10/15 | 野村アセット2.11%、NOMURA INTERNATIONAL 2.43%、野村證券1.05% |
| ベイリー・ギフォード | 3.14% | 7/15 | 減少基調 |
| 自己株式 | 0.34% | 9月末 | 921,759株 |
出典:EDINET大量保有報告書、同社3Q決算短信より筆者作成
上位3者と自己株式を除く浮動株は33.99%、約9,093万株である。
前回記事時点の38.56%から4.6pt縮んだ。シンフォニーとオアシスの合計50.61%は、自己株式を除く議決権ベースで50.78%となる。2者がそろえば、出席率に関係なく普通決議を可決でき、特別決議を否決できる。
ただし両者は共同保有の届出をしていない。
シンフォニーが議案ごとにどちらへ投じるかは、外部から読めない。野村グループは9月に3.32%へ減ってから再び5.59%へ増えたが、増加分の大半は英国法人で、貸株・在庫の出入りを含む可能性がある。

信用需給|制度信用は小さく、空売りは測れない
| 項目 | 数値 | 基準日 |
|---|---|---|
| 信用売残(合算) | 52.6万株 | 10/29 |
| 信用買残(合算) | 145.6万株 | 10/29 |
| 日証金 貸株残/融資残 | 9.9万株/35.4万株 | 10/30速報 |
| 日証金 貸借倍率 | 3.56倍 | 10/30速報 |
| 逆日歩 | なし | 10/30速報 |
出典:東京証券取引所、日本証券金融。証金残は速報値で、翌営業日の確報と乖離する場合がある
制度信用の売残は発行済の0.2%にすぎず、逆日歩もつかない。
機関投資家の売り建ては相対の貸株市場で成立しており、制度信用のデータでは規模を測れない。空売り残高報告の合算値は筆者が一次データで確認できておらず、踏み上げを前提とする議論は観測できない領域に依拠する。
3Q決算はゼロ回答|会社は動かなかった
インフォマート株価にとって3Q決算の焦点は、会社がオアシスの圧力にどう応じるかだった。
結果は業績予想・配当予想ともに据え置き、自社株買いの発表もなかった。
業績面では、1〜9月の営業利益が3,393百万円(前年同期比+40.9%)と増益を保った。ただし通期計画5,000百万円への進捗率は67.9%で、3Q単体の営業利益は市場予想を下回った。中期経営方針の公約である営業利益50億円は、4Qに3Q比+26%の積み増しを要する。
会社が示した新材料は、AI・データ戦略のロードマップとK&Cファクトリーの連結化である。オアシスが保有目的に挙げる「AI及びデータの活用」に対し、会社が答えを示し始めた形ではある。ただし収益計画は示されず、回答の本番は年内公表予定の次期中期経営計画に持ち越された。詳細は決算分析記事で扱う。
決算は10月30日の取引終了後に開示されたため、同日終値766円には織り込まれていない。翌営業日以降の株価反応は、執筆時点で未確認である。
インフォマート株価の今後|3経路と臨時総会の窓
インフォマート株価の今後を左右するのは、買い増しの継続ではなく、買い終えた後に何が起きるかである。
追加取得の予定が消えた以上、焦点はオアシスの要求と会社の応答に移った。
臨時総会の招集請求権が発動するフェーズ
会社法は、総株主の議決権の3%以上を6か月前から引き続き保有する株主に、臨時株主総会の招集請求を認める。
オアシス6月25日付の大量保有報告書によれば、オアシスは同月24日の取得前に既に4.70%を保有していた。提出時点で直近60日の取得記録は2日分しかなく、3%超の保有は遅くとも4月下旬から続いている。
6か月継続の要件は遅くとも10月下旬に満たし、招集請求はいつでも可能な段階にある。
シンフォニーとの合計が議決権の過半を超えた今、臨時総会は定時総会(2027年3月下旬)を待たずに役員人事を議題化できる手段になる。
臨時総会のための基準日設定の開示は、執筆時点で確認できない。
買い止まり後の3経路
| 経路 | 引き金 | 需給の変化 | 株価の性質 |
|---|---|---|---|
| A 要求フェーズへ移行 | 臨時総会の招集請求、特設サイト開設 | 新規イベントで期待が更新 | イベント価格が維持・再加速 |
| B 会社側の先回り | 次期中計での還元強化、自社株買い | 発表で急伸、応募次第で主役交代 | 好材料が出口装置を兼ねる |
| C 膠着 | 要求の不発と業績の未達が並行 | 出来高が細り支えが減衰 | じり安。PER45倍なら522円 |
出典:本文の分析にもとづき筆者作成
3Q決算で会社が動かなかったため、経路Bの可能性は次期中計の公表まで持ち越された。
仮に100億円の自社株買いを766円で実施しても取得は1,305万株、発行済の4.9%にとどまる。オアシス保有の2割弱で、自社株買い単独で降ろせる規模ではない。
10月8日以降の出来高半減は、経路Cの入口条件の一つを満たした。それでも株価は700円台後半を保っており、需給の崩れはまだ価格に表れていない。オアシスは市場で降りられないため、買いが止まっても大口の売りが直ちに出る構造ではない。
インフォマート株価に関する疑問と確認点
- 空売りの踏み上げは起きるのか
-
判定材料が不足している。日証金で観測できる制度信用は発行済の0.2%程度で、相対の貸株市場の実態を測れない。10月30日速報の貸借倍率は3.56倍、逆日歩はつかず、貸株の逼迫を示す数字は出ていない。買い戻し需要は一度使えば消えるため、下値のクッションにはなっても、上値を継続的に押し上げる燃料とは言い難い。
- 買い止まりは株価下落のサインか
-
直ちに下落を意味しない。10月8日以降、出来高は半減したが、株価は730円台から一時808円まで上がった。売り物も同時に細ったためである。オアシスの役割は買い手から要求者に移っており、買い止まりは撤退ではなく段階の移行と読むのが整合的である。
まとめ|買い止まりは撤退ではなく移行
インフォマート株価は、オアシスの買い止まりと会社のゼロ回答を経て、次の段階に入った。
上昇の全量は倍率の拡大であり、業績が株価に追いつく構図は3Q決算でも生まれなかった。
注視すべき指標は次の4点である。
- オアシスの変更報告書:「減少」の報告が初めて出るか。増加報告のみを追うと転換点を見逃す
- 臨時総会:基準日設定や招集請求の適時開示
- 次期中期経営計画:資本政策・還元方針・ES事業の回復策
- 出来高:日平均177万株からさらに細るか
| 時期 | 事象 | 意味 |
|---|---|---|
| 11/2以降 | 3Q決算への株価反応 | ゼロ回答の評価 |
| 年内 | 次期中期経営計画(2027〜2029年)の公表 | 会社の回答書 |
| 11月以降 | オアシスの6か月保有到達 | 臨時総会の招集請求要件を充足済みとみられる(遅くとも10月下旬) |
| 12月29日 | 期末配当の権利落ち | 期末配当3.29円(予想) |
| 2027年2月中旬 | 通期決算 | 営業益50億円公約の成否 |
| 2027年3月下旬 | 定時株主総会 | 役員選任議案の攻防 |
未解決の論点も残る。シンフォニーが共同歩調を取る保証はなく、第一ライフグループは経営側の資本業務提携先である。議決権の過半という数字は、2者の票が揃った場合の上限にすぎない。
前提と算定基礎・データ出所
| 項目 | 前提 |
|---|---|
| 予想EPS | 通期予想純利益3,097百万円÷自己株控除後株式数=11.6円で全PERを統一 |
| 発行済株式数 | 267,507,864株(自己株式921,759株) |
| オアシス保有 | 24.70%・66,066,600株(10月15日提出、10月7日義務発生) |
| 平均取得単価 | 取得資金381.18億円÷66,066,600株=577.0円 |
| 浮動株 | 100%−上位3者65.67%−自己株式0.34%=33.99% |
| 出来高 | 10月8日〜30日の16営業日平均 約177万株 |
一次:保有割合・取得資金・保有目的(EDINET大量保有報告書・変更報告書)/業績・予想・配当(同社2026年12月期第3四半期決算短信・決算説明資料)。二次:株価・出来高・信用残(東京証券取引所公表値)/貸株・融資残(日本証券金融速報値)。未取得:空売り残高報告の合算、臨時総会の基準日設定。
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筆者は本記事で取り上げた株式会社インフォマート株式を保有している。
