スター・マイカ・ホールディングス(2975)が2026年9月30日、2026年11月期第3四半期決算を発表した。
3Q累計の経常利益は88.9億円(前年同期比+78.0%)と、5月修正後の通期計画87.7億円をすでに超えた。それでも会社は通期予想を据え置いている。
本稿ではスター・マイカ決算の数字から、据え置きが「保守」なのか「4Q失速の予告」なのかを検証する。論点は販売戸数の回復の中身、1億円以上の高価格帯の成約率低下、金利と借入の膨張の三つである。
※この記事は公開情報に基づく分析であり、投資推奨ではない。投資判断は読者自身の責任で行ってほしい。
記事からわかること
- 据え置き予想が示す「4Q経常▲1.2億円」、スワップ評価益を除いた実力の進捗
- 販売戸数の実態(ファンド191戸を除くと前年比+8.0%、空室リノベは失速)
- カチタス・ムゲンエステートと並べて見える金利負担の実情(支払利息÷営業利益)
スター・マイカHD決算の実績|経常は3Qで通期超過
スター・マイカの3Q累計決算は、売上高・各段階利益ともに3Q累計として過去最高を更新した。経常利益と純利益は、3Q時点で5月修正後の通期予想を上回っている。
| 項目(百万円) | 3Q累計実績 | 前年同期 | 増減率 | 通期予想(据え置き) | 進捗率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 65,228 | 48,536 | +34.4% | 89,168 | 73.2% |
| 売上総利益 | 14,205 | 9,130 | +55.6% | 16,890 | 84.1% |
| 営業利益 | 9,768 | 5,836 | +67.4% | 10,449 | 93.5% |
| 経常利益 | 8,893 | 4,995 | +78.0% | 8,771 | 101.4% |
| 当期純利益 | 6,079 | 3,429 | +77.3% | 6,030 | 100.8% |
| EPS(円) | 172.08 | 102.23 | +68.3% | 167.62 | 102.7% |
出典:スター・マイカ・ホールディングス 2026年11月期第3四半期決算短信、決算説明資料(2026年9月30日)
売上の伸び+34.4%に対し、営業利益は+67.4%と2倍近いペースで伸びた。粗利率は前年同期の18.8%から21.8%へ3.0pt改善している。一方、会社は「足元の市場環境等を注視し、5月公表の修正後予想を据置き」と説明した。
据え置き予想は4Q経常赤字を意味する
通期予想を額面通りに受け取ると、4Q単体(9〜11月)の数字は次のとおりになる。
| 4Q単体(百万円) | 据え置き予想の逆算 | 前年4Q実績 |
|---|---|---|
| 売上高 | 23,940 | 20,622 |
| 営業利益 | 681 | 1,477 |
| 経常利益 | ▲122 | 1,161 |
| 当期純利益 | ▲49 | 755 |
出典:決算短信およびFactBookより筆者算出
売上は前年4Qを16%上回るのに、経常利益は赤字になる計算だ。直近5四半期で単体経常利益の最低は、前年4Qの11.6億円である。据え置き予想をそのまま4Qの見通しと読むのは無理があり、上方修正を先送りした数字と見るのが自然だろう。
スワップ評価益を除いても経常進捗は96%
経常段階の通期超過には、一時的な押し上げが含まれる。3Q累計のデリバティブ評価益は4.4億円(前年同期2.3億円)で、会社自身も「一過性の金利スワップ評価益等により」前倒し達成したと説明している。
これを除いた経常利益は84.5億円、通期予想に対する進捗は96.3%である。本業の営業利益でも進捗93.5%に達しており、評価益を割り引いても4Qに必要な利益はわずかだ。なお評価益は金利上昇の副産物であり、金利が下がる局面では逆に経常利益を押し下げる。
スター・マイカHD決算のポジティブ評価|数量は堅調、出口も拡大
スター・マイカの3Q決算で最も大きい前進は、2Q時点で懸念した販売戸数が、ファンド分を除いても前年を上回ったことである。加えて主力のOCリノベの採算、財務の厚み、出口の多様化の三点も数字で裏づけられた。
販売戸数554戸、ファンド除きでも+8.0%
2Q時点では、2Q単体の販売戸数が429戸と前年同期比▲15.0%に落ちた点を最大の論点と見ていた。3Q単体は554戸で、前年同期の336戸から+64.9%増えた。ただし554戸には、7月組成ファンドへの一括売却191戸が含まれる。これを除くと363戸で、前年同期比+8.0%である。
2Qの前年割れも、前年同期にあったファンド向け116戸の剥落が主因だった。ファンド除きでは2Qも+10.3%で、実需向けの販売は1割前後の伸びを保っている。四半期の戸数は、ファンド計上の時期で大きく振れる。2Q記事で掲げた「数量の宿題」は、基準差を除けば当初から小さかったことになる。
OCリノベの粗利率27.7%は崩れていない
OC物件を購入し退去後にリノベして売る「OCリノベ」は、3Q累計で販売497戸(+47.9%)、販売価格4,130万円(+12.9%)、粗利率27.7%(+4.9pt)だった。粗利額は56.8億円と前年同期の2倍超である。
FactBookでは3Q単体のOC粗利率が20.7%と、2Qの27.1%から大きく下がって見える。こうした区分には、賃貸中のままファンドへ売った「OCその他」が含まれる。累計開示の差分から試算すると、3Q単体のOCその他の粗利率は約13%、OCリノベは約28%である(筆者試算)。
粗利率の低下は低採算のバルク販売が混ざったミックス要因で、OCリノベ自体の値崩れを示すものではない。
増資で自己資本比率28.3%、中計目標を上回る
東京建物への第三者割当増資65.6億円が6月1日に払い込まれ、3Q末の自己資本比率は28.3%(前期末25.6%)に上がった。中計目標の25.0%以上を上回る水準である。これについて、会社は増資による一時的な上昇と位置づけ、4Qの追加購入を経た通期着地を26〜28%程度と見込む。
有利子負債÷自己資本(D/Eレシオ)も、前期末の2.73倍から2.40倍へ下がった。借入を2割増やしながら財務レバレッジを下げられたのは、増資と利益蓄積の効果である。
DBJ第2号ファンド191戸で出口を広げた
7月には日本政策投資銀行(DBJ)と組む流動化ファンドの第2号を組成し、賃貸中物件191戸・約50億円を売却した。第1号の154戸・約30億円から規模が大きくなり、三菱UFJ銀行をアレンジャーとするシンジケートローンで参加行も増えた。
賃借人の退去を待たずに売れるため、OCの回転期間が縮む。会社はファンドへの出資分の配当やPM(管理)フィーも受け取る。「OCその他」の粗利は3Q時点で通期計画の103%に達しており、出口の多様化は計画以上に進んでいる。
スター・マイカHD決算のネガティブ要因|高価格帯と金利
スター・マイカの3Q決算で注意すべき点は、高価格帯の失速、4Qの費用増、借入と金利負担の膨張の三つに絞れる。
1億円以上の成約率は9%まで落ちた
会社側の説明: 東京都の中古マンションでは2億円以上の成約率が半減し、自社の1〜2億円帯も「水準調整局面」と認識している。高価格帯の取り組みを強化した結果、販売在庫が増えて一時的に成約率を押し下げた。今後は収益を確保しながら販売を進める方針である。
筆者の見立て: 自社リノベ物件の成約率(月次換算)は、1億円未満が27%と前年同期30%から小幅な低下にとどまる。一方、1億円以上は前年同期17%、2Q約31%から、3Qは9%へ落ちた。在庫42戸と母数が小さく四半期の振れは大きいが、前年比でも前期比でも低下している。1億円以上の販売在庫は42戸で、販売在庫全体の9%にあたる。
今回の失速は空室リノベの数字に表れている。3Q単体の空室販売は165戸(前年同期189戸、▲12.7%)で、売上は79.6億円と2Qの112.3億円から▲29.1%落ちた。空室リノベの粗利進捗は77%と3区分で最も低く、会社も「Q4の販売進捗を要注視」とする。数量を戻したのはOCとファンドであり、2Qまで利益を押し上げた都市部高価格帯という片翼は失速している。
前期比の利益率低下と4Qの販管費増
四半期単体の営業利益率は1Q 16.4%、2Q 15.0%、3Q 13.6%と、前期比で下がり続けている。
3Qの低下は、2Qにあった一過性収益の剥落が主因である。一棟売却益と大口成功報酬を含むインベストメント・アドバイザリーの粗利は、2Qの7.3億円から3Qは2.6億円に減った。加えて、粗利率の低いファンド向け販売が混ざった。販管費は2Qの15.9億円から15.2億円に減っており、3Qの低下要因ではない。前年同期比では、営業利益率は1Q+2.1pt、2Q+5.3pt、3Q+1.3ptと、3四半期とも改善している。
注意すべきは4Qの費用である。
販管費に含まれる消費税は3Q累計12.5億円と、前年同期6.2億円の約2倍に膨らんだ。仕入を増やすほど膨らむ費用で、会社は4Qにも追加購入を検討し「Q4の販管費増加要因」と明記した。投資額を900億円超へ広げれば、4Qの利益率はさらに押し下げられる。
借入988億円、支払利息は前年同期比+39%
3Q末の有利子負債は987.8億円で、前期末比+22.3%増えた。3Q単体の支払利息は4.5億円と、前年同期の3.3億円から+39.3%増えている。
支払利息と平均残高から逆算した実効借入金利は、年率約1.85%(前年同期約1.59%、筆者試算)に上がった。会社は販売用不動産への投資額を通期計画900億円超へ広げる方向で最終検討している。ヘッジは変動借入の約60%を固定化した水準のままで、前期末時の約70%には戻っていない。
会社は弱点を数字で開示した
2Q記事では、中古価格への反証だけが「実需層中心だから堅調」といった定性論理にとどまり、数字がないと指摘した。3Qの説明資料で会社は、自社物件の価格帯別成約率を初めて開示し、1〜2億円帯の水準調整を自ら認めた。弱点を実数で示した開示姿勢は、経営陣の誠実さとして評価できる。
同じ資料のQ&Aは「実需層向けの中〜高価格帯は今後も堅調」との主張を残している。実数が示すのは「1億円未満は堅調、1億円以上は調整」であり、言葉と数字の間にまだ溝がある。変動金利借入残高の実額(固定化60%が何億円にかかるか)も非開示で、金利への備えの厚みは外部から検証しきれない。
スター・マイカHD決算を4軸で読む|同業と金利
スター・マイカの3Q決算を、自社の過去、同業2社、市場の期待、金利環境の4軸で並べる。見えてくるのは、数量と利益率は前年を上回るが、在庫と借入がそれ以上の速さで積み上がり、同業と比べると金利負担は中位という位置である。
時間軸:利益率は前年比改善、支払利息は1.4倍
| 四半期単体(百万円) | FY25 Q3 | FY25 Q4 | FY26 Q1 | FY26 Q2 | FY26 Q3 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 14,814 | 20,622 | 21,300 | 22,120 | 21,807 |
| 営業利益 | 1,819 | 1,477 | 3,492 | 3,316 | 2,958 |
| 営業利益率 | 12.3% | 7.2% | 16.4% | 15.0% | 13.6% |
| 経常利益 | 1,446 | 1,161 | 3,455 | 2,906 | 2,531 |
| 支払利息 | 326 | 333 | 348 | 419 | 454 |
| 販売戸数(戸) | 336 | 507 | 455 | 429 | 554 |
| うちOC(戸) | 147 | 318 | 258 | 210 | 389 |
| うち空室(戸) | 189 | 189 | 197 | 219 | 165 |
| 購入戸数(戸) | 428 | 340 | 572 | 595 | 570 |
| 販売用不動産(期末) | 107,960 | 105,029 | 114,180 | 123,244 | 132,295 |
| 有利子負債(期末) | 84,274 | 80,760 | 89,742 | 97,070 | 98,782 |
| 賃貸中戸数割合 | 77.5% | 75.3% | 76.7% | 75.0% | 72.8% |
出典:スター・マイカ・ホールディングス FactBook(2026年8月31日)より筆者作成
3Q単体は売上+47.2%、営業利益+62.6%と前年同期を大きく上回った。
営業利益率は1Qをピークに前期比で3四半期連続低下したが、前年同期比では各四半期とも改善している。3Qの低下は、2Qの一過性収益の剥落によるところが大きい。一方、支払利息は5四半期で1.4倍に増えている。
横軸:同業と並べると金利負担の差が際立つ
| 項目 | スター・マイカ(2975) | カチタス(8919) | ムゲンエステート(3299) |
|---|---|---|---|
| 対象期間 | 26/11期 3Q累計(25年12月〜26年8月) | 27/3期 1Q(26年4〜6月) | 26/12期 2Q累計(26年1〜6月) |
| 主戦場 | 都市部の中古区分マンション | 地方の中古戸建 | 首都圏の投資用・居住用不動産 |
| 売上高 前年同期比 | +34.4% | +25.4% | ▲18.8% |
| 営業利益 前年同期比 | +67.4% | +28.4% | ▲49.4% |
| 売上総利益率 | 21.8%(+3.0pt) | 23.5%(▲0.5pt) | 23.7%(▲3.9pt) |
| 営業利益率 | 15.0% | 12.7% | 10.4% |
| 支払利息 前年同期比 | +35.6% | +41.5% | +58.9% |
| 支払利息÷営業利益 | 12.5% | 2.7% | 23.3% |
| 在庫 前期末比 | +26.0% | +9.1% | +7.9% |
| 有利子負債 | 988億円 | 355億円 | 668億円 |
| 自己資本比率 | 28.3% | 53.3% | 32.3% |
| D/Eレシオ | 2.40倍 | 0.66倍 | 1.88倍 |
| 通期予想 | 据え置き(経常進捗101.4%) | 据え置き(営業進捗26.5%) | 下方修正(営業 前回比▲30.7%) |
出典:各社決算短信・決算説明資料より筆者作成。正規化注記:3社とも日本基準。(注)在庫・売上の伸び率は対象期間が異なるため、3社間の大小比較はできない。
決算期が異なるため、2026年9月末時点で開示済みの最新累計期間を並べた(期間の長さは不一致)。在庫はスター・マイカ=販売用不動産、カチタス・ムゲンは仕掛販売用不動産を含む。
支払利息の伸び率は3社とも2桁で、金利上昇はセクター共通の逆風である。差が出るのは営業利益に対する重さだ。カチタスは自己資本比率53.3%で利息負担が利益の2.7%にとどまり、ムゲンは減益で23.3%まで重くなった。
スター・マイカは12.5%と中位だが、在庫を9カ月で+26.0%積み増している。借入の伸びが続けば、比率は自然に上がる。
同じ外部環境でも、効き方は3社で非対称である。
| 逆風 | スター・マイカ | カチタス | ムゲンエステート |
|---|---|---|---|
| 高価格帯の減速 | 1億円以上の成約率9%、販売在庫の9%に限定 | 主顧客は年収200〜500万円層で影響は小さい | 居住用の高価格帯が低調で減収の主因 |
| 海外投資家の後退 | 実需中心と説明 | 該当しない | 海外向け売上比率が約25%へ低下、平均単価▲44.4% |
| 買主の住宅ローン金利 | 変動金利・ペアローンの普及を根拠に需要継続と説明 | 審査否決による解約率に変化なしと開示 | 言及なし(自社借入の期間は長期化) |
出典:各社決算説明資料より筆者作成
高価格帯の減速は、ムゲンでは業績全体を押し下げ、スター・マイカでは在庫の1割弱に表れ、カチタスには新築高騰からの需要流入としてむしろ追い風に働いている。価格帯と顧客層の違いが、同じ市況の効き方を分けている。
期待軸:市場はすでに上方修正を織り込む
会社予想の経常利益87.7億円に対し、アナリストのコンセンサスは101.5億円(2026年8月27日時点)と約16%上にある。筆者試算では、4Q単体の営業利益が前年並みの約15億円なら通期経常は約99億円、3Q並みの約30億円なら約114億円となる。コンセンサスはこのレンジの下寄りにあり、100億円前後への上方修正は「既知」の範囲にとどまる公算が大きい。
今回の開示を既知と新出に仕分けると、最高益・中計の前倒し達成・東京建物との提携・年51円配当は5月までに開示済みである。新出は経常の通期超過、ファンド第2号の規模、価格帯別の成約率、投資額900億円超の検討であり、市場にとってのサプライズはむしろ慎重に見るべき側にある。
決算発表は9月30日の取引終了後で、同日終値は1,397円だった。夜間PTSは1,395円とほぼ動かなかったが、翌10月1日の東証では売りが先行した。始値は1,277円、安値は1,250円と、9月11日の年初来安値1,313円を下回った。終値は1,298円(前日比▲7.1%)、出来高は71万株と前日の約1.7倍に膨らんだ。
同日のムゲンエステートは▲1.9%、カチタスは±0%にとどまり、下げは個別要因である。1,298円ではPER7.7倍、PBR1.20倍、配当利回り3.93%となる。会社推計の1株NAV約1,750円に対し、P/NAVは約0.74倍である。東京建物への発行価格1,716円も24.4%下回る。
構造軸:金利1%上昇で利益4%弱の下押し
日銀は9月18日に政策金利を1.25%へ引き上げ、10年国債利回りは3%台に乗せた。野村證券は次回利上げを12月、到達点(ターミナルレート)を1.75%と見ている。
一方、市場では到達点2%超の見方が優勢で、10月の連続利上げも一部織り込まれている。首都圏の中古マンションは8月度で成約件数▲10.5%(5カ月連続減)、成約㎡単価▲3.8%(4カ月連続下落)、在庫+8.2%と調整が続く。
| 3Q時点(1.0%)からの上昇幅 | 想定する政策金利 | 年間の支払利息増 | 通期営業利益予想に対する比率 |
|---|---|---|---|
| +0.25% | 1.25%(9月実施済) | +0.99億円 | 0.9% |
| +0.75% | 1.75%(野村予想) | +2.96億円 | 2.8% |
| +1.00% | 2.00% | +3.95億円 | 3.8% |
| +1.25% | 2.25% | +4.94億円 | 4.7% |
前提:3Qの支払利息は政策金利1.0%時点の水準のため、1.0%を起点とした。3Q末の有利子負債987.8億円の全額を変動借入とみなし、会社開示の固定化比率約60%を差し引いた40%(395億円)に上昇幅が効くと置いた上限試算(筆者試算)。
9月時点の利上げ分だけで、4Q以降に年約1億円の利息増が乗る。野村の到達点予想1.75%なら年約3億円で、営業利益の約3%にとどまる。市場の見方に近い2.25%でも、約5%である。
効いてくるのは金利よりも借入残高の増え方で、支払利息は前期12.3億円から、3Q単体の年換算で約18億円へ膨らんでいる。投資額を900億円超へ広げる選択は、この負担をさらに上乗せする。
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スター・マイカHD決算に対する筆者の見解
スター・マイカの3Q決算は、2Qで指摘した数量の懸念がファンド計上時期による見かけだったと確認できた。しかし一方で、宿題として高価格帯の先行き不安を残した決算である。据え置きは保守寄りと見るが、その保守には空室リノベの失速という具体的な根拠がある。
【 2026年10月1日時点の筆者の保有状況:取得単価1,547円 ポートフォリオの1.93%】
据え置きは保守、ただし根拠は空室リノベにある
4Q経常▲1.2億円の逆算値は現実的でなく、据え置きは上方修正の先送りと読むのが妥当だろう。前期も年度途中で上方修正を重ねた経緯があり、4Q決算前後の修正は十分ありうる。
もっとも、先送りの理由は曖昧ではない。3区分で最低の77%で、1億円以上の成約率は9%に落ちた。会社がこの在庫を「収益を確保しながら」売ると言うのは、値下げで数を合わせない意思表示でもある。4Qの利益は、値を守るか数を取るかの選択で上下に振れうる。
弱気側の最強論:在庫の天井買い
最も強い反対論は、市況の天井で最大の仕入を続けている点にある。3Q累計の購入額は756億円と前期通期628億円をすでに上回り、首都圏の成約㎡単価は5月から4カ月連続で前年を下回った。仕入の多くが高値圏で行われた可能性は否定できない。
これに対する最大の防御は、前期末で339億円あった含み益(簿価比32%)である。3Q累計の評価損は0.1億円にとどまり、価格が1割下がっても評価損には届きにくい。しかし、339億円は前期末の値で、今期に購入した756億円分、とくに高価格帯の在庫はクッションが薄い。
株価は金利と据え置き姿勢を見ている
株価は4月の高値1,846円から約3割下げ、PER7倍台、P/NAV約0.74倍まで割り引かれた。下げは二つの経路で生じている。
一つは金利で、IRのない8月末から9月11日にかけて約13%下げた。もう一つは決算への反応である。2Q発表翌日の7月1日は▲10.2%、3Q翌日の10月1日も▲7.1%前後と、好決算と予想据え置きの組み合わせに2回続けて売りで応じた。数字が良くても、上方修正を見送る会社の慎重さを、市場は割り引きにいっている。
評価は「条件付きで強気寄り」とする。条件は二つで、4Qに空室リノベの成約が戻ること、投資拡大の中でも支払利息÷営業利益が1割台前半に収まることである。この二つが次の決算で数字になれば、PER7倍台の評価は割安の側に振れる。崩れれば、割安には割安の理由があったことになる。
スター・マイカHD決算に関するFAQ
- 通期計画を超えたのに、なぜ上方修正しないのか
-
会社は「足元の市場環境等を注視」と説明するにとどまる。
数字から読める理由は、空室リノベの粗利進捗77%と1億円以上の成約率9%という4Qの不確実性、経常の超過分に一時的なスワップ評価益4.4億円が含まれる点である。据え置きの逆算では4Q経常が赤字になり、見通しとしての意味は薄い。
- 販売戸数の急増はどこまで本物か
-
554戸のうち191戸はファンドへの一括売却。これを除くと363戸、前年同期比+8.0%である。2Qの前年割れも、前年同期のファンド116戸の剥落が主因で、除外後は+10.3%だった。実需向けの販売は1割前後の伸びで安定している。一方、空室は165戸と前年同期を下回り、伸びはOCに偏っている。
- OC物件の粗利率低下は値引きのサインか
-
3Q単体のOC粗利率20.7%への低下は、低採算のファンド向け販売が混ざったミックス要因である。
累計開示の差分から試算すると、3Q単体の「OCその他」の粗利率は約13%だった。一方、退去後にリノベして売るOCリノベは、3Q単体でも粗利率約28%を保っている(筆者試算)。値引きの兆候は、少なくともOCリノベの数字には表れていない。
- 金利上昇でスター・マイカの利益はどれだけ減るのか
-
筆者の上限試算では、政策金利が3Q時点の1.0%から1.75%まで上がると、年間の支払利息は約3億円増える。通期営業利益予想の約3%にあたる。うち約1億円分は、9月の利上げで既に確定している。
スターマイカの決算について次期以降に注視すべき指標
次の決算(2026年11月期通期、2027年1月予定)では、次の三点を確認したい。
- 空室リノベの販売戸数と1億円以上の成約率: 3Q単体165戸、成約率9%から戻るか。値を守るか数を取るかの選択が粗利率に表れる。
- 支払利息÷営業利益: 3Q累計12.5%が1割台前半に収まるか。投資額900億円超の着地と、変動借入の固定化比率(約60%)の変化もあわせて見る。
- 含み益と実現率: 期末に開示される含み益(前期末339億円)が、価格調整局面で積み上がるか削られるか。
以上は論点の整理であり、投資判断を示すものではない。
スター・マイカHD決算のまとめ|宿題は数量から価格へ
スター・マイカの3Q決算は、経常利益が通期計画を3Qで超えた。販売戸数もファンド分を除いて前年比+8.0%と、前年を上回った。懸念される据え置き予想は4Q経常赤字を意味し、上方修正の先送りと読むのが自然である。
一方、戻った数量の中身はOCとファンドであり、都市部の高価格帯は成約率9%まで失速した。借入は988億円、支払利息は前年同期比+39%と膨らみ続けている。宿題は「数量」から「高価格帯の価格」と「借入の重さ」へ移った。PER7倍台・P/NAV約0.74倍まで下げた株価は、該当する二つが次の決算で数字になるかを待っている。
参照・注意事項
参照資料
- スター・マイカ・ホールディングス株式会社|2026年11月期 第3四半期決算短信〔日本基準〕(連結)(2026年9月30日)
- スター・マイカ・ホールディングス株式会社|2026年11月期 第3四半期 決算説明資料(2026年9月30日)
- スター・マイカ・ホールディングス株式会社|FactBook(2026年8月31日)
- 株式会社カチタス|2027年3月期 第1四半期決算短信、決算説明資料(2026年8月7日)
- 株式会社ムゲンエステート|2026年12月期 第2四半期(中間期)決算短信、決算説明資料(2026年8月7日)
- 東日本不動産流通機構|Market Watch サマリーレポート 2026年8月度
- 野村證券|マーケット解説(2026年9月24日・25日)
- 株価・コンセンサス:Yahoo!ファイナンス(2026年9月30日終値・夜間PTS)、株予報(2026年8月27日時点)
注意事項 本記事は公開情報に基づく筆者独自の分析であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではない。記載された数値・見解の正確性について万全を期しているが、これを保証するものではない。投資に関する最終的な決定は、読者自身の判断と責任において行うものとする。本記事は金融商品取引法に基づく投資助言を行うものではなく、景品表示法上の優良誤認・有利誤認を意図するものでもない。次回は2026年11月期通期決算(2027年1月予定)の発表時に本記事を更新する。
付録|スター・マイカHD決算の表現分析と一次資料照合
表1|表現計数マトリクス(開示の非対称)
好材料は数字で厚く、今回は悪材料も会社自ら定量で開示した。残る空白は、金利への備えと4Qの価格方針の二つに集中する。
| 区分 | 定量(数字あり) | 定性(数字なし) |
|---|---|---|
| ポジティブ | 経常進捗101.4%・OCリノベ粗利率27.7%(粗利+102.6%)・販売戸数554戸(3Q単体)・自己資本比率28.3%・ファンド第2号191戸約50億円・OCその他の粗利進捗103% | 中古マンション市場は中長期で拡大・成約の反動減は一時的・中〜高価格帯は今後も堅調・PER15〜25倍を目指す |
| ネガティブ | 首都圏成約件数▲10.5%・成約㎡単価▲3.8%・在庫+8.2%・東京都2億円以上の成約率半減・自社1億円以上の成約率9%・空室リノベ粗利進捗77% | 1〜2億円は水準調整局面・Q4の販売進捗を要注視・Q4の販管費増加要因 |
| 開示の空白(★) | ― | 変動金利借入残高の実額・4Qの価格見直し方針の数値・1億円以上在庫の簿価・含み益の期中値 |
表2|リスク→反証強度マップ
金利・住宅ローン・在庫評価は定量で反証され、相応に払拭されている。中〜高価格帯と成約減の二点だけが論理にとどまり、前者は会社自身が開示した実数と整合しない。
| リスク | 会社の反証 | 反証形式 | 関連実数との照合 |
|---|---|---|---|
| 金利上昇による借入コスト増 | 変動借入の約60%をスワップで固定化 | 定量 | 3Q単体の支払利息+39.3%。変動借入残高は非開示★ |
| 住宅ローン金利上昇による需要減 | 変動金利選択約75%・ペアローン等約40%・35年超ローン約23%で月次返済はほぼ横ばい | 定量(市場データ) | 自社1億円未満の成約率27%(前年同期30%)で需要は概ね維持 |
| 中〜高価格帯の取引鈍化 | 実需層中心のため今後も堅調と予想 | 論理のみ | 自社1億円以上の成約率9%、会社も水準調整と認める。主張と実数が不整合 |
| 首都圏中古マンションの成約減 | 2025年急増の反動で一時的と予想 | 論理のみ | 成約件数5カ月連続減・在庫6カ月連続増。一時的かは未検証 |
| 在庫の評価損 | 前期末含み益339億円、毎期3割程度を実現 | 定量 | 3Q累計の評価損0.1億円で実数と一致 |
表3|直前四半期からの変化(2Q=6月30日 → 3Q=9月30日)
| 項目 | 2Q(2026年6月30日) | 3Q(2026年9月30日) | 変化 |
|---|---|---|---|
| 業績予想への評価 | 「進捗は極めて良好」 | 「一過性の金利スワップ評価益等により前倒しで達成」 | 超過の一部を会社自ら一過性と限定 |
| 市況の開示 | 中古価格への反証は論理のみ | 「足元の中古マンション市場」の章を新設、価格帯別成約率を開示 | 論理から定量へ(ネガ方向の自己開示) |
| 高価格帯の認識 | 1〜2億円帯は実需で堅調 | 1〜2億円は水準調整局面 | 堅調から調整へ |
| 投資額 | 通期900億円程度 | 900億円超の追加購入を検討 | 拡大 |
| ファンド化 | 重点施策として推進 | 第2号191戸・約50億円を組成 | 予定から実行へ |
| 金利ヘッジ | 変動借入の約60%を固定化 | 約60%を固定化 | 変化なし(1Q時点の約70%には戻らず) |
| 自己資本比率 | 24.7% | 28.3% | 増資払込で上昇 |
表4|中期経営計画(FY2026)の進捗
| 目標項目 | FY2026目標 | 3Q実績・会社見通し |
|---|---|---|
| 売上高 | 891億円 | 3Q累計652億円(進捗73.2%) |
| 営業利益 | 104億円 | 3Q累計97.6億円(進捗93.5%) |
| 当期純利益 | 60億円 | 3Q累計60.7億円(進捗100.8%) |
| ROE | 12.0%以上 | 17.1%(見通し) |
| EPS成長率(FY23〜26年平均) | 14.0%以上 | +28.2%(見通し) |
| 販売用不動産残高 | 1,000億円以上 | 1,322億円(3Q末) |
| 自己資本比率 | 25.0%以上 | 28.3%(3Q末) |
| PBR | 1倍以上 | 1.29倍(9月30日終値ベース) |
出典:決算説明資料、決算短信より筆者作成
利益と資産規模の目標は3Q時点でほぼ達成した。中計の残る論点は、PBRが1倍台前半にとどまり、会社が掲げるPER15〜25倍との距離が縮まっていない点である。
